加齢・健康・疾患におけるマグネシウムの役割

公開日:2025年10月31日

2021年、イタリア・パレルモ大学医学部老年科の研究者らは、“加齢・健康・疾患におけるマグネシウムの役割” と題した総説を報告したので、その論文概要を紹介します。

年齢を重ねるにつれて、マグネシウム(Mg)の代謝にさまざまな変化が起こることが報告されています。具体的には、Mg摂取量の減少、腸での吸収力の低下、腎臓からのMg排出増加などが挙げられます。軽度のマグネシウム不足は自覚症状がほとんどなく、明確な兆候も現れにくいため、見過ごされがちです。

しかし、高齢者では、倦怠感、睡眠障害、感情の不安定さ、認知機能の低下などが見られることがあり、これらは加齢によるものと誤解されることもあります。慢性的なマグネシウム不足は、体内で活性酸素(フリーラジカル)を増やし、老化に関連するさまざまな慢性疾患の原因になると考えられています。

マグネシウム不足は、以下のような多くの病気と関連しています:

食事からのマグネシウム摂取に加え、飲料水に含まれるマグネシウム(食品より吸収されやすい)やサプリメントの活用も、不足を補う手段として検討する価値があります。生涯を通じてマグネシウムのバランスを保つことは、酸化ストレスや加齢に伴う慢性疾患の予防につながる可能性があります。ただし、これらの効果については今後の研究での検証が必要です。

 

参考資料:

Barbagallo M, Veronese N, Dominguez LJ. Magnesium in Aging, Health and Diseases.
Nutrients 13:463-482, 2021
DOI: 10.3390/nu13020463
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7912123/

 

 

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MAG21研究会のホームページでは、マグネシウムと加齢・健康・疾患の関係について幾つかの論文を紹介しています。

今回の総説論文の研究者らは、加齢・健康・疾患におけるマグネシウムの役割として最近までの多くの文献をレビューし、マグネシウムと心臓病、高血圧、脳卒中、代謝異常や2型糖尿病、呼吸器疾患、うつ病やストレス関連の精神疾患、アルツハイマー病やその他の認知症、筋肉の痛み、慢性疲労、線維筋痛症、骨粗鬆症、がんとの関係について示されました。

マグネシウムの摂取不足は虚血性心疾患、高血圧・糖尿病・メタボリックシンドロ-ムなどの生活習慣病、歯周病、喘息、不安とパニック発作、うつ病、(慢性)疲労、片頭痛、骨粗鬆症、不眠症、こむら返り、便秘、PMS(月経前症候群)、悪阻(つわり)、胆石症、尿路結石、大腸がん、すい臓がん、動脈硬化、全身性炎症性疾患、そして長期記憶、アルツハイマー病、さらには、昨今パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症とその重症化リスクなど様々な疾病・病態とも密接に関連していることが基礎的・臨床的・疫学的研究でも明らかにされています。今後マグネシウム摂取の重要性がさらに認知され、正しい食育が行われる事が切に望まれます。

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