公開日:2025年7月18日
2020年、米国・コロンビア大学アービング医療センター、コロンビア大学メールマン公衆衛生学部、中国・上海交通大学医学部、テキサス州立大学、インディアナ大学、アラバマ大学医学部の研究者らは、“アメリカの若年成人を対象にした30年間の追跡調査でマグネシウム摂取量が多いと肥満リスクが低くなる”に関する報告をしたので、その論文の概要を以下に紹介します。
目的
目的は、マグネシウム(Mg)摂取量と肥満発症、身体指標および生化学的指標との関連性を前向きに調査することです。
方法
冠動脈疾患リスク若年成人研究【大規模前向きコホート研究、Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)】では、1985~1986年に18~30歳の米国人若年成人5,115人(女性50.7%)を登録し、その後8回の追跡調査で再検査しました。 肥満の定義は、体格指数(BMI) ≥ 30 kg/m2 としました。 食事によるMg摂取量はベースライン、7 年目と 20 年目に食事履歴から評価しました。
結果
30年間の追跡調査中に1,675人の肥満発症例が特定されました。Mg摂取量が多いほど肥満になる確率が低い傾向が認められました。
食事からのMg摂取量を5等分(五分位に振り分け)し、第1五分位【(Q1)一番少ないグループ、99.8 mg/1,000 kcal】のハザード比を基準1.0とし、第5五分位【(Q5)一番多いグループ、208.1 mg/1,000 kcal】までを比較しました。ハザード比はそれぞれQ1 1.0、Q2 0.86、Q3 0.83、Q4 0.55、Q5 0.49でした。
さらに、Mg摂取量はBMI、上腕三頭筋皮下脂肪、肩甲骨下部皮下脂肪、空腹時インスリン、C反応性タンパク質のレベルが低い傾向を示しました。Mgを豊富に含む食品(全粒穀物、ナッツや種子、マメ類、濃緑色野菜)の摂取も肥満発症率の低下に関連していました。
注釈: 第5五分位(Q5)のハザード比0.49とは、Mg摂取量が一番多いグループの肥満発生率が51%低下するという意味です。
結論
この長期的な観察研究は、Mgの多い食事を続けていると肥満のリスクが下がる可能性を示唆しています。
参考資料:
Lu L, Chen C, Yang K, Zhu J, Xun P, Shikany JM, He K. Magnesium intake is inversely associated with risk of obesity in a 30-year prospective follow-up study among American young adults. Eur J Nutr 59: 3745–3753, 2020
doi:10.1007/s00394-020-02206-3.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7483156/
【コメント】
この研究者らは、30年間の追跡調査によりマグネシウム(Mg)摂取量が多いと肥満の発生率が低下する可能性を発表されたことに意義があります。
この研究の主任研究者コロンビア大学アービング医療センターKa He教授は、Mgに関し以前から精力的に数多くの研究論文を発表され、当MAG21研究会のホームページで一部解説しています。
2006年、米国ノースウエスタン大学医学部の研究者Ka He教授(当時)らは、“18~30歳の若者4,637例を対象に15年間追跡調査し、マグネシウム摂取量が最も多い群では最も少ない群に比べてメタボリックシンドロームになるリスクは31%減少し、「若い時から十分なマグネシウムの摂取がメタボリックシンドロームになるリスクを低下する」と報告しています。
He K, et al., Circulation 113:1675-1682, 2006
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/circulationaha.105.588327
なお、Ka He教授は2012年5月、日本糖尿病学会の招聘により来日され、①日本糖尿病学会年次学術集会ランチョンセミナー、②同学会シンポジウム、③日本糖尿病学会関東甲信越支部学術集会それぞれで講演されました。
日本では2010年、お茶の水女子大学、防衛医科大学、東京慈恵会医科大学などの研究者らは、「健常ヒト被験者において塩化マグネシウムサプリメントが脂肪吸収を抑制することで食後高脂血症を改善することを示唆する」と報告しています。この研究で使用した塩化マグネシウムの素材は、西オーストラリア・デボラ湖産のマグネシウム含有量が極めて豊富、カリウムが比較的多く、更にナトリウムとカルシウムが極めて少ない天然高濃縮マグネシウム液(MAG21)です。
Kishimoto Y, Tani M, Uto-Kondo H, Saita E, Iizuka M, Sone H, Yokota K, Kondo K. British Journal of Nutrition 103(4):469-72, 2010
2010-02-24 健常ヒト被検者の食後血清脂質反応に対するマグネシウムの影響
当ホームページでは、これら研究者らの文献についても解説して来ました。
2007.10.19 マグネシウムの食後高脂血症に及ぼす影響
2009.01.19 マグネシウムの脂肪細胞分化に及ぼす影響
MAG21研究会のホームページでは、検索機能を設置しています。例えば“脂肪”などの検索キイワードを入力して記事を検索すると関連記事がリストアップされますので、ご利用ください。
マグネシウムに関する様々なご質問を心からお待ちしております。